オレ、感動の再会を果たした。彼女が会いに来てくれた。
この日を待ち望んでいたかもしれない。
野良仲間に攻撃的だった当時のオレをよく知っている彼女。オレの保護者だ。
いつも、あの小石だらけの自転車がいっぱいある場所で、「ネリ〜!!」とオレを呼んでは、美味しいものをたくさん食べさせてくれた。オレをものすごく可愛がってくれた。よく覚えている。そうだ。オレはネリと呼ばれいていた。今はくまと呼ばれているが。
ネリ、懐かしい響きだった。彼女は、くまでも良いですよ、と先生に言ったが、オレを当時のようにネリと呼んで撫でてくれた。幸せだった。
名前なんてどうでも良いと思っていたが、この時だけは懐かしさと嬉しさを覚えた。
大好物のササミもたくさんくれた。先生がお礼を言ったが、あれはオレのササミだ。
当時、彼女はオレを自宅にも入れてくれたんだ。そこにはすでに彼女に愛されている見知らぬ猫が住んでいたんだ。オレは、すぐ友達になれると信じて、得意の猛アタックをした。
そして、嫌われた。
彼女は、オレとの暮らしを諦めたんだ。彼女が悪いんじゃない。あの猫は年寄りだったんだ。彼女は猫の幸せをとてもよく考えている。だから、具合の悪くなったオレを野生に返さずに病院に預けた。そして、元気になったオレの里親探しが始まったんだ。まさか、こんなちっこい先生に出会うなんて想像もしていなかったが。運命は不思議だ。あっけなく行き先が決まったあとも、彼女はお土産を持ってオレに会いに来て、お別れをしてくれたんだ。
でもこうしてまた彼女に会えて、オレは幸せ者だと思う。ネリでなく、くまになっても。
ちなみに、先生はオレのことを、くまごろうとか、くろすけとか、くまっちとか、毎回呼び方が適当だ。たまに「くまちゃん♡」と優しい声で近付いてくる。
オレはイラっとして逃げる。
オレは毎日可愛がってくれる看護師が好きなんだ。最近は抱かれるのも悪くないと感じるようになった。
でも先生はオレの腹白いところを笑う。
だからまだ抱かせない。
先生が近づくと、逃げる。
そして、今日も
猫じゃらしで高速回転するオレがいる。