皆様は愛犬、愛猫が何歳を過ぎたら高齢と思われますか?

そして、どの程度お口の中を観察し、どの程度になったら気になりますか?

当院ではこの一年で、抜いた歯の本数200本以上、歯石除去最高齢猫18歳、犬17歳でした。

抜歯が好きなわけでもないし、歯石除去を強制もしていません。(歯科専門医でもありません)

でも、やってあげたい、やってあげなきゃという状況に遭遇する機会が多いんです。

それだけお口のトラブルが多いという事です。

 

猫ちゃんの場合、歯肉口内炎による痛みの治療としてぐらついていなくても全抜歯が必要なケースも、

またわんちゃんの場合は歯石と歯肉炎でボロボロになったお口の治療として抜歯や歯石除去が必要など、状況は様々です。

高齢でも、ご決断頂いて、処置後から食欲も元気もアップして若返ったとのお声を頂くととても嬉しいです。

何よりもお口の悪臭とおさらば出来たことが一番嬉しいと言って頂けたりもします。

食べられなくなってしまうのは相当進行してから。人と違ってかなり重度な環境のお口でも食欲を落とさない子が殆どです。

だから治療は遅れがちです。抜歯はとても大変だし痛みも伴います。

ですので早めの歯石除去もお勧めですが、何よりも日々のお手入れとチェックが大切と考えます。

お口用のグッズは様々あります。歯磨き、スプレー、デンタルガム、サプリメント、デンタルシートetc.

これらを習慣にする事で、必然的にお口のチェックができていることになりますのでお口のトラブルの早期発見にもつながります。

グッズの選び方や使い方はご家族と動物の環境に合わせてご提案できます。無理なく楽しく日々のケアを是非お勧めしたいです。

健康な歯で長生きは、動物も同じです。

歯石は菌の塊。全身に影響を及ぼします。

歯肉口内炎は痛みとの戦い。生活の質(QOL)を落とします。

ぐらついた歯は痛みを伴い、その隙間には食べカスが入り更に歯石の温床ともなり、歯肉の炎症を悪化させQOLを落とします。

そうなってしまったら麻酔下での処置ですが、そうなる前に防げるだけ防いであげたいのが本音です。

基礎疾患があるし無理だろう、臭いを我慢すればいいだろう、高齢だからできないだろう・・・

そう思わずに、是非一度、ご相談ください。

 

前回処置させて頂いたダックスちゃんは心臓病と甲状腺機能低下症を持つ17歳で、高齢のため病院では治療を勧められず諦めていたとの事。

食欲は落ちていませんでしたが、診察させて頂き、本人の切ない思いが聞こえてきた気がしました。

「口が痛いよ。食べにくいし臭いもひどい。よだれでいつも顎が濡れてて痒いよ。先生、なんとかならないの?」

確かに、この年齢で積極的に麻酔を勧める先生は多くありません。自分が必ずしも正しいとは思っていません。

ただ、なんとかしてあげたい、この不快なお口と一生を共にさせるなんて・・・。

麻酔はできます。咄嗟に、そう伝えていました。

ほってはおけない状況を説明し、麻酔のリスクもご承知頂き、やれるならやってあげたいと、ご決断下さったご家族。

 

重度の歯石と、歯肉炎も伴っていました。

慢性的なヨダレでお口の周りの毛は変色しています。

麻酔前はここまでしっかり診れませんでした。

痛くてお口を開けたがらないからです。

 

麻酔は危険と隣り合わせでした。重度の弁膜症を持つ、人で言えば90歳くらいのおじいちゃん。

彼はとても強かった。腐っていてもガッチリくっついて離れない9本の歯を全て抜歯し縫合を終えるまでの長時間の麻酔に、見事耐え抜きました。

そして何よりも、麻酔当日の夜にはモリモリ食べる元気が戻っていました!

 

すでに唯一の支えになっていた2本の犬歯がなくなり

下顎は完全に短くなってしまったのに、

上顎の犬歯を抜いた事で鼻出血もまだあるのに、

器用に、ガツガツと!

その眼は生命力に満ちていました。

本当に可愛いおじいちゃん。

 

至福の瞬間です。食欲を見せてくれる姿、回復した姿、何よりも励みになります。

動物の生命力と、ご家族のご決断に今回もまたまた、感動を頂きました。

生きる希望を失わないことが一番の薬、そしてご家族の愛情。そこに少しだけ手を差し伸べるのが我々の仕事です。

再診で元気に来院したおじいちゃん。お口ももう全く臭わないし、ヨダレも出ない、体重まで増えていました!

「先生、楽になったよ。もう痛くないし違和感もない。ヨダレもないしごはんも美味しく食べられる。何よりも、ママが喜んでくれているのが一番なんだ」

大変満足して下さった飼い主様の笑顔と、わんちゃんの元気な姿に、また幸せをおすそ分けして頂きました。

おじいちゃん、まだまだ、元気で長生きしてね。

 

 

そんな自分も現在、ずっとほっておいた痛みのある歯を、ようやく歯医者さんで治療中です。はい、虫歯です。

お医者さんは苦手なんです。

 

 

 

(基礎疾患や年齢は麻酔のリスクに大きく影響します。上記は、全ての動物の治療の安全性を保障するものではありません事をご理解願います)